中医学の五臓には肝・心・脾・肺・腎がある。これは西洋医学でいう肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓とは似て非なるものである。中医学では実質的な臓器ではなく機能として捉えている。五臓のうち肝について以下に記す(その他の臓腑については「中医漢方医学の基礎」を参照されたい)。
肝は主に自律神経系が関与する臓器であり、その病証は主にストレス性疾患と関連がある。ストレス疾患を患っているときに酸味のあるものを欲したり、柑橘系の香りをかぐと心が癒やされる。
肝の病証であるストレス疾患には五色の中では青(緑)がよいとされている。これはストレスで緑黄色野菜などに含まれているビタミンが減少するためである。
1年を五季(春・夏・晩夏・秋・冬)に分けることができる。春は冬から夏に変わる時期で、最も自律神経バランスを失いやすく自殺者も多い。また、花粉(風邪:ふうじゃ)によってアレルギーを引き起こしやすい季節でもある。
生体内の五臓はお互いに協力関係にある。肝の例を以下に記す。
肝の血虚を生じた場合は腎から精のサポート(相生)を受けて肝血を補充する(肝血虚⇒補肝腎)。また心の血虚を生じた場合は肝の血でサポート(相生)することになる。
脾の気が滞ってしまうと消化機能が低下して食欲低下を生じる。肝の自律神経を安定にすることにより脾をコントロール(相克)できる。また、ストレスで肝気の鬱結を生じた場合は肺の呼吸を整えることで精神が安定する(相克)。